ライフコース・アプローチ
- 善導寺こどもクリニック
- 4 日前
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Healthy Habits 94_総論14
今回は、小児期の健康と社会経済的要因のその後への影響に関する論文を読みました。 (※)
この研究は、健康の社会的決定要因に関する理解を深め、ライフコース・アプローチの重要性を示しているものです。
Introduction
個人の健康は静的なものではなく、色々な要因の影響を受ける。
幼少期が成人期の健康に及ぼす影響は、発達上の重要な時期に起こる負の出来事が、永続的に健康の軌跡を変化させるという考え方と、曝露の蓄積が変化を生じさせるという2つの考え方がある。
「子どもの頃の環境が大人になってからの健康に長く影響する」いわゆる long arm of childhood(子ども時代の長い影響) が注目されている。
本研究の目的は、幼少期に関連する状況が、退職間近または退職前の成人の機能的制限のレベルと進行にどのように影響するかを検証すること。
Methods
アメリカの大規模研究を用いて、約1万人を8年間追跡。
アウトカムはmobilityに基づくfunctional limitation(0–11点)で評価。小児期健康は回顧的5段階評価、社会経済的環境(SES)は親の教育、家庭貧困、父不在、経済的ショックなど複数指標で測定した。
統計解析にはlatent growth curve modelを用い、
intercept(初期状態)
slope(変化速度:線形+二次項)
を分離して評価。さらに成人期SES、慢性疾患、BMI、喫煙などを段階的に調整。
評価した項目は、
「身体機能」の推移が以下の■の項目からどのような影響を受けているかを統計モデルで検証。
「身体機能」は、階段を登れるか、歩けるか、椅子から立てるかといった日常動作をもとに、「どれくらい体が動かしにくいか」を点数化。
■子ども時代の健康状態は、回顧的報告で主観的なもの
■幼少期の社会経済的状況
■成人後の生活状況や病気
■慢性疾患や身体計測情報
Results
当然ながら年齢とともに身体機能は低下し、そしてその低下は時間とともに加速していった。
● 小児期要因
小児期の健康不良および低SESは
interceptの上昇(初期から機能低下)
slopeの増加(より急速な悪化)
の双方に有意に関連した。
● 成人期要因
一方で成人期の
SES(教育・収入・資産)
慢性疾患
は interceptには強く関連するが、slopeとはほぼ無関係だった。
● 調整後
成人期要因を調整後も、小児期健康の影響は残存し、特にslopeへの影響はほぼ説明されなかった。
Discussion
小児期の健康および社会経済的状況は、成人期の身体機能の初期水準とその後の変化の軌道の両方に影響していた。この関連は成人期の健康やSESを調整後も残存し、一部は媒介されるものの完全には説明されなかった。本研究は、小児期要因が健康の水準だけでなく経時的変化にも影響することを示した。限界として、共変量を時間不変として扱っている点、因果関係の不確実性、小児期健康の回顧的測定が挙げられる。総じて、小児期要因は成人期要因よりも健康の変化パターンに強く関連していた。
小児期の要因が成人期の機能的健康の状態のみならず変化の軌にも関与することを示した点で、本研究はlong arm of childhoodを強く支持する結果といえます。臨床的には捉えにくい概念ですが、ライフコース・アプローチを理解する上で基盤となる文献と考えます。

(※) Haas S. Trajectories of functional health: the 'long arm' of childhood health and socioeconomic factors. Soc Sci Med. 2008;66(4):849-861.
【Healthy Habits 全記事まとめ】→ こちら




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