Healthy Habits 59_食事11
今回は、味覚の嗜好に関するレビューを読みました。(※)
子どもの味の好みが形成されていく過程に関してまとめてあります。
IMPORTANCE OF EARLY-LIFE EXPERIENCES
・幼少期の経験は数十年後の大人になってからの健康にも影響する
・特に、幼少期に塩分や糖分を含む食品を過剰に摂取すると、その後の肥満、メタボ、心血管疾患による死亡率など、多くの病気や症状を引き起こす
・このような長期的な影響は、ライフコースアプローチの根底にある
・人間は一般的に、生まれつき砂糖や塩に対して肯定的な反応を示し、苦味に対して否定的な反応を示す
・乳幼児期に確立された食習慣は、栄養価の高い食品も低い食品も、小児期や青年期まで追跡できることが縦断的研究で示されている
・小児期において、幼児がどのような食品を食べるかの最も強い予測因子は、
1)その食品の味が好きかどうか
2)母乳で育てられた期間と母親がこれらの食品を食べていたかどうか
3)幼少期からこれらの食品を食べていたかどうか
BIOLOGY OF THE CHEMICAL SENSES
味覚と嗅覚(特に後鼻的嗅覚)を通じて感じられるフレーバーが、どのようにして人間の食行動に影響を与えるか
フレーバーと感覚システム
フレーバーは、味覚と嗅覚(食物を口に入れて感じる香り)が組み合わさって生まれるもので、これらの感覚は、人が食べ物を「受け入れる」か「拒否する」かの重要な判断をするのに役立つ。
生物学的役割
味覚と嗅覚は、消化器系に対して、栄養素や有害物質の量と質について知らせる役割も持っている。これにより、体は必要な栄養を摂取するか、有害な物質を避けるかを決定する。
子どもと食の好み
子どもは、甘いものや塩味を好み、苦い味を嫌うことが多い。これは、子どもの基本的な生物学的な反応に基づいている。実験的な研究によると、甘さや塩味が特に魅力的に感じられるのは子ども時代に顕著。
薬物と脳の報酬システム
多くの乱用薬物は、塩味(「原初の麻薬」)や甘味(「最古の報酬」)といった快楽の根底にある古代の脳の報酬系を利用している。
甘いものの嗜好性に関する最大規模の研究の一つでは、子どもは0.54mol/Lのショ糖濃度を最も好むものとして選択した。これは、一般的なコーラのショ糖濃度(0.34mol/L)のほぼ2倍だった。
EFFECTS OF EARLY TASTE EXPERIENCES: FIRST FOODS, AMNIOTIC FLUID, AND MOTHER’S MILK
「Developmental plasticity(発達的可塑性)」
甘いものや塩分の多い食品に慣れることが、将来的に不健康な食習慣や味の好みに繋がる可能性がある。
※この場合の「可塑性」は消極的な意味で使われています。
母親が摂取(果物、野菜、香辛料など)または吸入(タバコ、香水など)した多種多様な風味は、羊水または母乳に移行する。 乳児がこれらの揮発性物質や味を経験することで、母乳、粉ミルク、固形食品の受容性が変化する。
EVIDENCE-BASED STRATEGIES ON FRUIT AND VEGETABLE ACCEPTANCE DURING INFANCY
・乳児は、特定の食品に繰り返し(8~10回)触れることと、味と食感の両方が異なる食品に触れることを通じて学習する。その結果、導入された食品だけでなく、他の新しい食品も食べる意欲が高まる。
・新たな食品と慣れ親しんだ食品を一緒に与えることは、乳児を徐々に新たな食品に慣らしていくのに最適な組み合わせかもしれない。 しかし、苦味のある野菜の受容を促進するためには、様々な野菜に繰り返し触れなければならない。
・乳児の食事中の表情だけで判断してはいけない。乳児は、食物への曝露を繰り返すことで摂取量が増加しているにもかかわらず、嫌悪の表情を示し続ける可能性がある。養育者は、食事中の表情だけでなく、乳児がその食品を食べようとする意欲に注目すべき。
・食品の食感、様々な食感に触れるタイミングも重要。
CONCLUDING REMARKS
食の選択は文化的な特性で、生物学とは関係ないと考えられがちだが、塩分や糖分の多い加工食品という現代の食環境に対して、子どもの生物学的な特性が脆弱であることは大切な観点。
子どもにキャンディーよりブロッコリーを好ませることはできない。しかし、人生の早い段階からの感覚経験が味や食べ物の好みを形作り、変えることができるという知識が増えていくことで、子どもの好みを過度な甘味や塩味ではなく健康的な味や多様性に向けるのに役立つ。

(※) Mennella JA. Ontogeny of taste preferences: basic biology and implications for health. Am J Clin Nutr. 2014;99(3):704S-11S.
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