日本の思春期における Social Jetlag と日中機能障害
- 善導寺こどもクリニック
- 2月11日
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Healthy Habits 87_睡眠15
今回は、ソーシャル・ジェットラグ(social jetlag)、いわゆる「社会的時差ボケ」に関する、日本の中学生を対象にした調査を取り上げます。(※)
まず、social jetlagの具体例を示します。
(例)1時間以上の social jetlag(研究で問題とされた水準)
平日 就床:23:30 起床:06:30→睡眠中点:03:00
週末 就床:00:30 起床:08:30→睡眠中点:04:30
→平日と休日の睡眠中点の差は1時間30分となり、これをsocial jetlag ≥1時間と定義。
Introduction
思春期は、概日リズムの後退(夜型化)や、学業・部活動・デジタル機器使用などの社会的要因が重なり、睡眠リズムが乱れやすい時期である。その結果、平日と週末の睡眠タイミングのずれ、いわゆる social jetlag(社会的時差ぼけ) が生じやすい。成人では、social jetlag が肥満、代謝異常、抑うつ症状などと関連することが知られているが、日本の思春期を対象に、social jetlagの分布と日中機能(気分・眠気・疲労・学業成績)を包括的に検討した研究はなかった。
本研究は、日本の中学生を対象に、social jetlag の実態、日中機能障害との関連を明らかにすることを目的とした。
Methods
学校ベースの横断研究。対象は、広島市内の全13中学校に在籍する12~15歳の生徒で、解析対象者は4,782人(回収率 91.8%)。
【Social jetlag の評価】
social jetlag は、平日と週末の睡眠中点(midpoint of sleep)の差として算出。0~1時間未満を基準とし、1~2時間、2時間以上の3群に分類。加えて、週末の睡眠中点が平日よりも早い「negative social jetlag」を独立したカテゴリとして評価した。
<評価アウトカム>
日中機能に関するアウトカムとして、以下を評価。
いらだち気分
睡眠不足感
日中の眠気(Pediatric Daytime Sleepiness Scale)
疲労
学業成績(自己評価であるが、実測の学力テスト成績と高い相関が報告されている指標)
<統計解析>
解析には、学校をランダム効果とした一般化線形混合モデルを用いた。学年・性別に加え、生活習慣因子を調整し、さらに平日・週末の睡眠時間、睡眠の質、平日の睡眠中点を段階的に調整することで、social jetlag と各アウトカムとの関連を検討した。
Results
1. Social jetlag の分布
1時間以上の social jetlag:過半数
2時間以上:約15%
成人集団より 明らかに高頻度
2. 睡眠パターン
・social jetlag ≥1時間の群では、
夜型クロノタイプ
週末の起床時刻が2時間以上遅延
平日の睡眠負債が顕著
・negative social jetlag(週末前倒し群)では、
週末の睡眠時間が最短
部活動等による早起きが示唆された
3. 日中機能障害との関連
睡眠時間・睡眠の質を調整後も、social jetlag ≥1時間は、いらだち気分 ↑、日中の眠気 ↑、疲労 ↑、学業成績 ↓
≥2時間で影響はより強い(用量反応関係)
注目すべき点として、negative social jetlagは、疲労・学業成績不良が ≥2時間のsocial jetlagと同程度に関連。
Discussion
日本の思春期において social jetlag が高頻度に認められ、1時間以上の social jetlag は、いらだち気分、日中の眠気、疲労、学業成績不良と関連することを示した。これらの関連は、睡眠時間や睡眠の質、生活習慣因子を調整した後も維持されており、social jetlag が単なる睡眠不足とは異なる側面をもつ可能性が示唆される。
また、週末の睡眠リズムが平日より前倒しとなる negative social jetlag においても、疲労および学業成績不良との関連が認められた。著者らは、週末の早起きによる睡眠時間短縮や睡眠負債の影響をその背景として指摘している。
本研究は横断研究であり因果関係は明らかでなく、今後は縦断研究や介入研究による検証が必要であると結論づけられている。
休日の朝に「寝だめ」するというのは、睡眠が不足している証拠と考えられます。一時的には眠気が解消されたような感覚になりますが、「寝だめ」では睡眠不足を補うことはできず、今回の結果のような様々な面において、日頃の睡眠不足習慣の影響が及んでいる可能性があります。「規則正しく」が大切です。

(※) Tamura N, Komada Y, Inoue Y, Tanaka H. Social jetlag among Japanese adolescents: Association with irritable mood, daytime sleepiness, fatigue, and poor academic performance. Chronobiol Int. 2022;39(3):311-322.
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