子どものテレビ・ゲーム時間を左右する家庭環境の要因
- 善導寺こどもクリニック
- 3 日前
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Healthy Habits 85_スクリーンタイム15
今回は、子どものスクリーン視聴時間と家庭環境や親のスクリーン視聴時間との関連を報告した論文を取り上げます。(※)
Introduction
研究の目的は、母親と父親のスクリーン視聴時間と電子メディア環境要因が、ポルトガルの子供のスクリーン視聴時間とどのように関連しているか、また、平日と週末、子供の年齢や性別によって関連が異なるかどうかを調べること。
Methods
2009年~2010年にポルトガルで実施された、子どもの肥満に関する横断的調査のデータを使用。
当初17,509人のデータ提供があったが、欠損値が多いため、完全なデータを持つ2,965人を最終的な分析対象とした。
主な測定変数
スクリーン視聴時間: 保護者への質問票に基づき、母、父、子のテレビ、PC、電子ゲームの平日・週末の時間を報告。
テレビ時間: 「2時間未満」 対 「2時間以上」 に二値化。
その他のメディア時間: PCと電子ゲームを合算し、「1時間以下」 対 「1時間超」 に二値化。
メディア環境: 家庭内の機器の数、子どもの寝室のテレビ/PCの有無、ノートPCの所有の有無。
統計
ロジスティック回帰モデルを使用。
性別と年齢(7歳未満 vs 7歳以上)で層別化して分析。
父母の学歴とBMI(肥満度)を交絡因子として調整。
Results
7歳未満が1448人
7~10歳が1517人
平日に2時間以上テレビ視聴 男子約28% 女子約26%
週末にはそれが男子75%、女子74%に上昇する
ロジスティック回帰分析では、
■テレビ視聴時間(平日 2時間以上)の予測因子
・親のテレビ視聴時間が長いと、子どもの視聴時間も長くなる(ORは2.05~7.94、pは0.008以下)。
・寝室のテレビは、女児7歳以上の視聴時間増加と関連(OR=1.91、p=0.002)。
■その他の複合メディア利用時間(平日 1時間超)の予測因子
・電子ゲーム機器の数は、全グループで利用時間増加に強く関連。
・ノートPCは、年少層(特に週末の年少男児 OR=4.26)の利用時間増加に強く関連。
・寝室のPC/TVも、年少男児のPC(OR=2.70)、年長男児のTV(OR=2.15)の利用時間増加と強く関連。
Discussion
過去の報告と同様に、親のテレビ視聴時間は、幼児のテレビ視聴時間と強く関連していた。
母親のテレビ視聴時間の方が強い因子だった。
機器へのアクセスも重要な要因だった。
視聴時間を減らすためには、家族ベースの介入が有効かもしれない。
Limitation
・除外群の背景を考慮すると、子どもたち全体を現していない可能性
・親の報告による調査
・どの時間帯に視聴されているかはわからない
・自記式の質問票であり、誤差の可能性
・横断研究であり因果関係の推測はできない
この研究は、「子どものメディア利用は、個人の問題ではなく、家族全体の環境と習慣の問題である」という認識を深める上で、価値のある結果だと思いました。やや古い論文であり、テレビ視聴を主に取り扱っていますが、現代のスマホにも同じことが言える可能性が高いと考えます。
子どものメディア利用を制限しようとしても、親自身が長時間スマートフォンを見ていたり、リビングでテレビをつけっぱなしにしていたりすれば、子どもはそれを見て育ちます。親が模範(ロールモデル)となりましょう。

(※)Jago R, Stamatakis E, Gama A, et al. Parent and child screen-viewing time and home media environment. Am J Prev Med. 2012;43(2):150-158.
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