小児アレルギー性鼻炎と行動問題：睡眠障害による媒介効果を示した大規模研究の示唆

Healthy Habits 84_睡眠16

今回は、アレルギー性鼻炎と児童の行動上の問題との関連性、その関連における睡眠障害の媒介度を検証した論文を取り上げます。(※)

Introduction

Behaviour problems(BPs)「行動問題」は子どもの発達や健康に大きな負担をもたらす重要な問題。さらに、ADHDや精神疾患、薬物使用などの高リスク行動の前兆となるため注意が必要。BPsはできるだけ早期に介入した方が良い。

アレルギー性鼻炎(Allergic rhinitis: AR)→BPsの可能性が高いが、これまでの研究では証拠に一貫性がない。

さらには、睡眠障害(Sleep disturbance: SD)はBPsの危険因子であり、ARはSDの危険因子でもある。

AR－SD－BPsの関係を検討することが目的。

※行動問題には、外に向かう問題（例：多動、衝動性、反抗、攻撃性）と内に向かう問題（例：不安、抑うつ、引きこもり）などがある。

Methods

・上海の都市部、2019年、6-12歳の小学生、26,827人が対象

・オンライン調査、18,316人が最終参加者

AR ： ‘Has your child ever been diagnosed with allergic rhinitis by a physician?’

SD ： Chinese version of CSHQ (35 items)　Children’s Sleep Habits Questionnaire

　 就寝時の抵抗、入眠遅延、睡眠時間、睡眠不安、夜間覚醒、睡眠障害、

　 睡眠時呼吸障害、日中の眠気

BPs ：CPRS (48 items)　コナーズの親評価尺度

　行動上の問題、学習上の問題、心身症的問題、衝動性多動性、不安、多動性

　の6つのサブスケール

共変量：性別、年齢、BMI、両親の教育水準、親の年齢、兄弟姉妹の有無、親以外の主な養育者の有無、家庭内喫煙曝露、低出生体重、扁桃肥大またはアデノイド肥大、喘息の既往

統計解析

・群間比較　ARあり vs ARなし

・ロジスティック回帰分析　ARとBPsの関連、ARとSDの関連

・Mediation解析

　AR →（SDが媒介）→ BPsの流れの中で、「SDがどれだけ割合として説明しているか」を可視化

Results

AR、SD、およびBPsの有病率はそれぞれ32.9%、23.3%、18.0%だった。

BPsの調整オッズ比（ORs）は、ARのある小児ではARのない小児と比較して有意に高く（すべてp  < 0.001）、行動障害のORは1.77（95% CI 1.54–2.03）、学習障害は1.67（1.48–1.89）、心身症は1.82（1.56–2.12）、衝動性・多動性は1.68（1.50–1.88）、不安は1.36（1.19–1.55）、多動性は1.67（1.49–1.88）だった。

Mediation解析の結果、SDはARと BP の関連を媒介しており、媒介割合は 32.6% ～ 64.1% (すべてp < 0.001)の範囲で 、その中で日中の眠気と睡眠障害呼吸が最も寄与していることが示された。

Discussion

・ARは、BPsと独立して関連

（交絡調整後も OR 1.36–1.82 と有意に高値）

・18,316名という大規模都市サンプルを用い、AR→BP sの関連を明確化

　SDが AR→BPsの関連を 32.6〜64.1% 媒介

　特に Daytime sleepiness と Sleep-disordered breathing の寄与が大きい

・AR と BPs には、睡眠以外にも “共通の背景因子” が存在する可能性がある。

遺伝的な共通基盤、妊娠中の母体免疫異常、アレルギー性炎症による中枢神経への影響（neuroinflammation）

Limitations

・横断研究のため 因果関係の方向性を確定できない

・AR・SD・BPsともに「自己申告・親報告」ベース

・睡眠障害は質問票のみで、客観的な指標がない

・AR の重症度・アレルゲン感作情報がない

・治療内容・コンプライアンスは評価できず

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ポイントは2点あると思いました。

・AR→BPsもある、AR→SD→BPsもある。SDを意識したＡＲ治療が大切。

・ARもSDもBPsのリスク因子の一つではあるが、BPsの修正可能な他のリスク因子も総合的に考える必要がある。

(※) Yang S, Yang J, Xu J, et al. Allergic rhinitis and behaviour problems in urban children aged 6 to 12 years and the mediating role of sleep disturbance. Ann Med. 2025;57(1):2460771.