自然遊びと子どもの発達
- 善導寺こどもクリニック
- 10月30日
- 読了時間: 3分
Healthy Habits 82_身体活動14
今回は、 子どもの自然遊び(nature play)に関するシステマティックレビューをとりあげます。(※) 自然遊びが幼児の健康や発達に与える影響をまとめたものです。
研究背景
幼児期の肥満やメンタルヘルスの問題は世界的に増加しており、身体活動不足・屋外遊びの減少が背景にある。近年、従来型の遊具中心の遊び場から、自然要素(木、草、水、砂、岩など)を取り入れた 「自然遊び(nature play)」 が注目されている。
しかし「自然遊び」が本当に子どもの健康・発達に有益かどうか、エビデンスは体系化されていなかった。
目的:2〜12歳を対象に、自然の中での自由遊び(unstructured free play) が子どもの健康・発達に及ぼす影響を、定量的研究に基づいて系統的にレビューすること。
方法
データベース検索:MEDLINE, ERIC, Embase, PsycINFO, Cochrane Library, Joanna Briggs, Emcare(〜2019年)。
選択基準:
対象:2〜12歳
介入:自然環境での自由遊び(構造化されたスポーツや授業は除外)
比較:従来型遊び場や室内遊びなど
アウトカム:身体活動(PA)、運動技能、認知、社会性、情緒など
デザイン:量的研究(RCTは含まれず、多くは観察研究や準実験)
採択研究数:16件(合計711人、主に2〜5歳)
結果
1. 身体活動(Physical activity)
7つの研究が報告。多くの研究で 自然遊び ≒ 従来型遊び場 と同等、または軽度の増加。
一部では有意な活動量増加(歩数やMVPA)を認めたが、逆に微減した研究もあり(約1分の減少、臨床的意義は乏しい)。
2. 運動発達・体力
2つの研究(同一データセット)でバランス・協調性が有意に改善。柔軟性の改善は認めず。
3. 認知的発達
一貫してポジティブ。想像遊び、創造的遊び、劇的遊び、建設的遊びなどが増加。
学習面では詩の表現力や授業集中度の改善が報告。
創造性テスト(TCAM)では fluency, originality, imagination が有意に改善。
4. 社会性
協同遊びや向社会的行動の増加が複数研究で報告。一部研究では差がなかった。
5. 情緒
攻撃性や抑うつスコアの低下、気分改善が報告。
議論
・方法論的限界
研究デザインの質は全体的に低〜中等度。
サンプルサイズ小(8〜97人)。
対照群設定の不十分さ(比較対象が同じ屋外環境のことも)。
観察手法・アウトカム測定の非標準化、信頼性・妥当性不足。
有意差の統計解析を行わず記述のみの研究多数。
定義の多様性(「nature playground」「natural playscape」「forest school」など)。
著者の結論
自然遊びは、子どもの身体活動・認知発達(特に創造性・想像遊び)にプラスの影響を与える可能性が高い。社会性や情緒面でも改善傾向がある。ただし、エビデンスの質はまだ十分でなく、
今後は以下が課題:
自然遊びの 統一的定義
標準化されたアウトカム測定ツール の開発
RCTなど より強固な研究デザイン の導入
自然遊びは、公園の遊具やスポーツなどよりも、五感が刺激されることが良い点だと思います。子どもたちは、例えば川の冷たい水、土や風の香りなど、大人にとっては当たり前のことでも、新しい刺激を感じて楽しめるはずです。

(※) Dankiw KA, Tsiros MD, Baldock KL, Kumar S. The impacts of unstructured nature play on health in early childhood development: A systematic review. PLoS One. 2020 Feb 13;15(2):e0229006.
【Healthy Habits 全記事まとめ】→ こちら




コメント