自然との触れ合いと子どもの健康
- 善導寺こどもクリニック
- 6月4日
- 読了時間: 2分
更新日:6月6日
Healthy Habits 70_身体活動12
今回は、自然との触れ合いと子どもの健康に関するシステマティックレビューを取り上げます(※)。
背景と目的
米国小児科学会は、子どもの身体的・社会情緒的健康の促進のために、日常的な屋外遊びを推奨している。本レビューの目的は、「自然との接触」が小児の健康にどのように影響するか科学的証拠を明らかにすること。
方法
6つの主要データベース(PubMed、CINAHL、PsycINFOなど)で2021年2月までに公開された文献を網羅的に検索。
研究の質はMixed Methods Appraisal Toolを用いて評価。
健康アウトカムは7領域(身体活動、精神・行動、BMI、心血管・代謝、喘息・アレルギー、成績・学習、その他など)に分類。
自然との接触は8つのタイプ(ガーデニング、緑地活動、住宅地の緑地、学校の緑地、緑化介入、自然体験、自然散策、その他)に分類。
結果
10,940件の研究から、296件の研究が基準を満たし系統的レビューに含まれた。
■自然曝露の種類とエビデンスの強さ
・居住地周辺の緑地(n=147): 最も研究数が多く、高いエビデンス。
身体活動や精神健康に対して、良好な関連を示した研究が多かった(59%が肯定的)。
・学校緑地(n=40): 中等度のエビデンス。
身体活動や学力に肯定的な影響。
・緑地での活動(n=35)、ガーデニング(n=12)、なども中等度のエビデンス。
・その他(教室内介入、自然散策など)はエビデンスが低い。
■健康アウトカムとの関連性
・身体活動(n=108): 強いエビデンス。
55%が加速度計などで客観評価。66%が肯定的な関連。
・精神・行動・認知機能(n=85): 強いエビデンス。
83%が肯定的な関連を示した。
・BMI関連(n=45): 中等度のエビデンス。
肯定的な関連は36%、多くが混合もしくは無関連。
・学力、喘息・アレルギー、循環代謝系:いずれもエビデンスは低い。
議論
研究の多くは横断研究(69%)であり、因果関係の判断が困難。
自然環境の質や利用実態の評価が不十分な研究が多い。
バイアス(選択・交絡など)のリスクが中~高レベル。
社会的弱者(低所得、マイノリティなど)への影響を扱った研究が少ない。
結論
小児における自然との接触は、身体活動と精神的健康に対し、有益な影響を持つ可能性が高い。特に居住地や学校周辺の自然環境へのアクセスは、子どもの健康にとって重要な社会的決定要因であり、公衆衛生上の優先事項とされるべきである。
総合的なエビデンスは決して高いとは言えない結果ですが、内容は一貫してポジティブと判断できると思いました。子どもたちが自然豊かな環境と触れ合う時間を大切にしたいですね。

(※) Fyfe-Johnson AL, Hazlehurst MF, Perrins SP, et al. Nature and Children's Health: A Systematic Review. Pediatrics. 2021;148(4):e2020049155.
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