寝る時間が不規則だと、子どもの行動にどう影響する?
- 善導寺こどもクリニック
- 6月18日
- 読了時間: 3分
更新日:6月23日
Healthy Habits 71_睡眠13
今回は、幼児期の不規則な睡眠習慣が数年後に影響を及ぼすことに関する論文を読んでみました(※)。
Introduction
子どもの睡眠リズムが情緒・行動の発達に影響する可能性は指摘されているが、非臨床集団での因果関係はまだ明確ではない。これまでの研究は多くが横断的で、家庭環境や社会的要因の交絡を十分に調整していない。
本研究の目的は、イギリスの出生コホートを用いて以下の3点を明らかにすること。
① 規則的な就寝時間と7歳時点の行動問題との関連
② 不規則な就寝の累積曝露による影響(dose–response)
③ 就寝リズムの変化と行動の変化の関連(可逆性の検討)
Methods
● 研究デザイン・対象
英国のMillennium Cohort Studyより、10,230人を解析対象とした前向きコホート研究。
就寝の規則性は、3歳・5歳・7歳の母親報告による質問票で評価。
行動問題は、Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)を用いて母親と教師が評価。
(総合得点が高いほど行動困難が多い)
● 就寝の規則性の定義
「いつも」または「たいてい」同じ時間に寝る → 規則的(regular)
「ときどき」または「全くない」 → 不規則(nonregular)
● 統計解析
線形回帰モデルを用いて、就寝規則性とSDQスコアの関連を評価。
Model A:年齢・性別のみ調整
Model B:家庭環境や育児行動など30項目以上の交絡因子を多変量調整
就寝リズムの累積的影響(1回、2回、3回不規則)も評価。就寝リズムが変化した群における行動スコアの変化を検証。
Results
●就寝時間が遅い/不規則な子どもは、所得や親の学歴、母親のメンタルヘルスなどの面で社会的に不利な背景を持つ傾向があり、生活リズムも乱れていることが多かった(例:朝食欠食、長時間のTV視聴など)。
● 規則的 vs 不規則な就寝と行動スコア
就寝が不規則な子どもは、SDQスコア(問題行動)が有意に高い。
- 母親評価:平均 8.47点(規則的群 6.62点)
- 教師評価:平均 6.86点(規則的群 5.60点)
● 不規則な就寝の「累積」が行動に悪影響
不規則だった回数が多いほど行動問題スコアが悪化(累積効果)。
- 母親評価:不規則な時期が3回 → SDQスコアが +2.10点
- 教師評価:同上 → SDQスコアが +1.85点
● 就寝の「改善」は行動の改善に関連
不規則 → 規則的 に変化した群はスコアが改善:
・3歳→7歳の間で就寝が不規則→規則的に変化した子どもでは、行動が有意に改善
- SDQスコア:-0.63点(P=0.032)
・5歳→7歳での改善では、より大きな改善
- SDQスコア:-1.02点(P=0.005)
・一方で、5歳→7歳で規則的→不規則に変わった子ではスコアが悪化
Discussion
規則的な就寝リズムは、子どもの行動問題のリスク低減に重要。
不規則な就寝は累積的に悪影響を及ぼし、しかし改善可能であることが示された。
就寝リズムの乱れが、概日リズムの乱れや睡眠不足→前頭前野の機能低下を通じて行動に影響する可能性。
「修正可能」という点は大切なポイントだと思いました。また、睡眠時間そのものに加えて、毎日同じ時間に寝るという規則性も大事という結果ですね。

(※) Kelly Y, Kelly J, Sacker A. Changes in bedtime schedules and behavioral difficulties in 7 year old children. Pediatrics. 2013;132(5):e1184-e1193.
【Healthy Habits 全記事まとめ】→ こちら
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