子どもの熱中症対策 親ができる予防策
- 善導寺こどもクリニック
- 7月9日
- 読了時間: 4分
更新日:7月11日
Healthy Habits 74_事故予防7
今回は熱中症対策を取り上げます。第36回でも取り上げていますが、参考文献の改定に伴い加筆修正を行いました。
7月に入ったばかりですが、すでに猛暑日もあり、今年は熱中症のリスクが去年よりも高いと考えています。熱中症は予防が大事です。保護者の方はお子さんを守るために、熱中症対策をしっかり行っていただければと思います。
熱中症の基本的な情報
まずは、熱中症の基本情報をスポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(※1)を中心にまとめました。
1975年~2023年の間に学校管理下の熱中症死亡事故は173件発生しています。
圧倒的に男子に多く、発生時期は7-8月がほとんどで、10時から16時の間に多く発生しています。運動開始から発症までの時間は必ずしも長時間とは限らず、約4割が2時間以内で発生しています。
「スポーツによる熱中症死亡事故は無知と無理によって健康な人に生じるものであり、適切な予防措置さえ講ずれば防げるものです。」とあるように、熱中症は予防が大切です。
熱中症予防5か条
1 暑いとき、無理な運動は事故のもと
2 急な暑さに要注意
3 失われる水と塩分を取り戻そう
4 冷やそう、からだの外から内から
5 体調不良は事故のもと
「暑さ指数」を確認
暑さの指標として、WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature)が用いられ、「暑さ指数」とも言われています。この「暑さ指数」をもとに、どのように運動したらよいのかの目安を示したものが以下の表です。

熱中症予防情報サイト(※2)で各地の「暑さ指数」がすぐにわかりますので、運動をする時や外遊びをする時には参考にしましょう。子どもにとってWBGT 31℃以上は、大人以上に過酷な熱ストレスとなるため、「運動は原則中止」と判断しましょう。

暑さへの慣れ
体が暑さに慣れることを暑熱順化(しょうねつじゅんか)と言います。
熱中症予防のためには少しずつ暑さに慣れることは大切です。中学生のスポーツにおける暑熱順化に関する推奨では(※3)、少なくとも14日以上の連続した暑熱順応期間を実施するよう記載されています。最新の熱中症診療ガイドラインにおいても(※4)、暑熱順化は有用である可能性が示唆されています。
何を飲めばよいか
熱中症の徴候を認めた際には特に塩分と水分が適切に配合された経口補水液が適切である、とされています(※4)。
市販のスポーツドリンクと経口補水液の成分の違いは一目瞭然で、経口補水液はスポーツドリンクよりも電解質濃度が高く、水と電解質の吸収を速めるために、糖分は少なく作られています。

最近は氷と飲料水が混合したシャーベット状の飲料物であるアイススラリーの摂取が注目されています(※1)。スポーツ飲料のアイススラリーも市販されているものがあります、内部冷却の効果も期待できるためこれも取り入れると良いでしょう。
他に親として出来ることは?
・米国小児科学会は、熱中症のリスクとして色々な項目を挙げています(※5)。その中に睡眠不足や休養不足,病み上がりが含まれています。
日頃から十分な睡眠を取っておくことが熱中症対策としても大事ということです。
また、熱が下がったばかりの状況で大会に参加したり、激しい運動をすることは出来るだけ避けたいものです。
・その他に、厚生労働省の[職場における熱中症予防対策の周知事業](※6)では、睡眠不足に加えて、朝ご飯の重要性も言及されていました。「朝食から水分や塩分等を摂取できるため朝食は絶対に抜かない」と示されています。以下に代表的な朝の和食の塩分量をまとめました。経口補水液の塩分量は、例えば市販のOS-1であれば、500mlで塩分1.46g相当です。
食品 | 1食当たり | 塩分相当量(g) |
お味噌汁 | 200ml | 1.2g |
焼き鮭 | 1切れ | 1.3g |
梅干し | 中1個 10g | 2.0g |
たくあん | 2-3枚 | 0.5g |
おにぎり(鮭や梅) | 1個 | 1.0-1.5g |
(※1)のトレーニング前の体調チェックも参考になります。
□睡眠が不足している(よく眠れなかった) □熱がある、熱っぽい
□喉が痛い □風邪を引いている □下痢をしている □朝食を抜いた
今年はあっという間に梅雨が明け、6月末から暑い日が続いています。これからも気温の高い日が続きます。
子どもの熱中症予防を改めて意識して安全で楽しい夏をお過ごしください。

(※1)スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック
(※2)熱中症予防情報サイト 暑さ指数(WBGT)の実況と予測
(※3) Adams WM, Hosokawa Y, Casa DJ, et al. Roundtable on Preseason Heat Safety in Secondary School Athletics: Heat Acclimatization. J Athl Train. 2021;56(4):352-361.
(※4)熱中症診療ガイドライン2024
(※5)Michael F. Bergeron, Cynthia DiLaura Devore, Stephen G. Rice, Council On Sports Medicine and Fitness and Council on School Health; Climatic Heat Stress and Exercising Children and Adolescents. Pediatrics September 2011; 128 (3): e741–e747.
(※6) 熱中症予防スイッチ・オン その行動、その習慣が、いのちを守る 自分でできる7つのこと
【Healthy Habits 全記事まとめ】→ こちら




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