Healthy Habits 48_総論6
毎年11月は乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)の対策強化月間と定められています。
今回は、SIDS関連情報と、2022年に改訂された[睡眠関連の乳児死亡:睡眠環境における乳児死亡を減らすための推奨事項-米国小児科学会-]をまとめました。
乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)
何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因のわからない病気で、
「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」と定義されています。主に睡眠中に発症し、日本での発症頻度はおおよそ出生6000~7000人に1人と推定、生後2か月から6か月に多いとされています。(※1)
令和4年には47名、令和5年には48名の乳幼児がSIDSで亡くなっており、
乳児期の死亡原因として、令和4年は第4位、令和5年は第5位となっています。(※2)
厚生労働省・こども家庭庁 「睡眠中の赤ちゃんの死亡を減らしましょう」
・1歳になるまでは、寝かせるときはあおむけに寝かせましょう
・できるだけ母乳で育てましょう
・たばこをやめましょう
・ベビーベッドに寝かせ、柵は常に上げておきましょう
・布団は固めのもの、掛け布団は軽いもの
・寝床にはなにも置かない
(※3)より引用
睡眠関連の乳児死亡:睡眠環境における乳児死亡を減らすための推奨事項-米国小児科学会-(※4)
睡眠関連死の病態生理学は複雑かつ多因子であり、トリプルリスクモデルが最も広く受け入れられている概念的枠組み。
1)赤ちゃんの呼吸や睡眠覚醒システムの根本的な異常や未熟さ
2)発達の重要な時期(生後数ヶ月)
3)環境要因やストレス要因(腹ばいや横向き寝、過熱、鼻や口を覆うなど)
それぞれの死亡は、複数の要因の相互作用から生じる。
睡眠関連死の多くは多因子性であるため、単一の死因を特定することは困難。
Aレベルの推奨事項:
・仰向けで寝かせる Back to sleep
※仰向けからうつ伏せ、うつ伏せから仰向けへと寝返りできる乳児は、その睡眠姿勢を維持してもよい。
・窒息や挟まり/閉じ込めのリスクを減らすために、硬くて平らな傾斜のない寝具を使用する。 他の寝具や柔らかい物は置かない。
・母乳による授乳を推奨する。
・赤ちゃんは親の部屋で、親のベッドの近くに寝かせるが、少なくとも最初の6か月は赤ちゃん 専用の別のベッドで寝かせる。
・枕、枕のようなおもちゃ、キルト、毛布、マットレスのトッパー、毛皮のような素材、そしてルーズな寝具(毛布やフィットしていないシーツなど)を赤ちゃんの睡眠エリアから遠ざける。
・昼寝や就寝時におしゃぶりを提供する。
・妊娠中および出産後に煙やニコチンの曝露を避ける。
・妊娠中および出産後にアルコール、大麻、オピオイド、及び違法薬物の使用を避ける。
・赤ちゃんを温めすぎたり、頭を覆うことを避ける。
・妊娠中の人は定期的な妊婦健診を受ける。
・赤ちゃんは予防接種を受ける。
・SIDSのリスクを減らすための戦略として自宅での心拍・呼吸モニターの使用を行わないこと。これらのモニターの使用によって SIDS の発生率が減るという報告はない。これらのモニターの使用により、親が油断し、安全な睡眠ガイドラインの順守が低下するという懸念もある。
・発達を促進し、斜頭症のリスクを抑えるために、監視下で起きている時のうつ伏せ時間を推奨する。
自宅での心拍・呼吸モニターの使用を行わないことが[推奨A]として書かれていることは重要な点だと思いました。機械を使用することを否定するものではありませんが、機械を使用することで上記の予防ポイントが疎かになってはいけません。
(※1)乳幼児突然死症候群(SIDS)診断ガイドライン(第2版)
(※2) 乳幼児突然死症候群(SIDS)について
(※3) 普及啓発用リーフレット
・厚生労働省
・こども家庭庁
(※4)
Moon RY, Carlin RF, Hand I; TASK FORCE ON SUDDEN INFANT DEATH SYNDROME AND THE COMMITTEE ON FETUS AND NEWBORN. Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2022 Recommendations for Reducing Infant Deaths in the Sleep Environment. Pediatrics. 2022 Jul 1;150(1):e2022057990.
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