Healthy Habits 34_食事6
今回は、「Milk and Health」というレビュー(※)を読んでみたのでまとめました。
牛乳は完全栄養食品という一般的な認識がある一方で、牛乳有害説も根強くあります。
牛乳摂取の健康への利点とリスクがまとめられていました。このレビューではどちらかというと、多量摂取には否定的な論調でした。
骨の健康と骨折リスク
牛乳とカルシウムの摂取量が多い国では、股関節骨折の発生率が高い傾向がある。しかし、この関係は因果関係ではなく、他の要因が影響している可能性がある。
米国での研究では、カルシウム摂取量と股関節の骨密度には関連がないことが示されている。
メタアナリシスでは、カルシウム摂取量や牛乳・乳製品の摂取量と股関節骨折のリスクには関連がないことが示されている。
カルシウムサプリメントが非椎体骨折の数を減少させる有意な効果は見られなかった。さらに、カルシウムサプリメントを摂取した人の方が股関節骨折のリスクが高かった。
カルシウム摂取量の推奨値は国によって異なり、米国では1,000mg/日、英国では450~550mg/日。
小児期に大量のカルシウム摂取が必要だという証拠はなく、カルシウム摂取量の閾値は低い。
思春期に牛乳を多く摂取することと、後年の股関節骨折のリスクには男性で関連が見られ、1日グラス1杯増えるごとにリスクが9%増加する。女性では関連が見られなかった。
既存のデータは、思春期に牛乳を大量に摂取することが後年の骨折予防になることを支持しておらず、むしろ骨折率を高める可能性がある。
総じて、牛乳やカルシウムの過剰摂取が骨折予防に有効であるという証拠は乏しく、適度な摂取が推奨されることを示唆している。
体重と肥満
29件のランダム化試験のメタアナリシスでは、ミルクやその他の乳製品が体重に及ぼす全体的な影響は見られなかった。
前向きコホート研究とランダム化試験の結果は、子供または大人の体重に対するミルク摂取の明確な影響を示していない。
血圧、脂質、循環器疾患・糖尿病
前向きコホート研究では、冠動脈疾患または脳卒中に関連する発生率または死亡率と明確に関連していなかった。
大規模なメタアナリシスでは、乳製品の消費は2型糖尿病とは関連していなかった。
がん
国際比較では、乳製品の消費量は、乳がん、前立腺がん、その他のがんの発生率と強い相関関係がある。
既存文献の大きな限界は、ほとんどすべての前向き研究が中年期以降の人を対象に開始されているのに対し、多くのがんリスク因子は小児期または成人期初期に作用すること。
結論
乳製品の多量摂取による健康上の有益性は確立されておらず、健康上の有害な結果をもたらす可能性のあるリスクについての懸念が存在する。
・牛乳には、主要栄養素、微量栄養素、および人間の栄養に寄与する可能性のある成長促進因子の複雑な組み合わせ
が含まれている
・しかしこれらの栄養素すべては他の食品から摂取できる
・成人の場合、乳製品摂取が骨折を減らすことは証明されていない
・いくつかのがんのリスクが高まる
・母乳が利用できない場合は非常に有用
・ミルクは成長速度と到達身長を上げるがリスクもある
・後年の骨折や、身長が高くなることと、がんのリスクとの関連
・個人のミルクの最適量は全体的な食事の質によって異なる
・食事の質が低い、特に貧困世帯などには有用
・ミルク消費が少ない場合の懸念はカルシウムとビタミンD
個人にとって最適な牛乳の摂取量は、全体的な食事の質によって異なるということで、食事の質が高い場合は、一律に「牛乳1日〇〇ml以上」というような目標設定は不適切なのかもしれません。何事も「バランス良く」が大切ということです。
(※) Willett WC, Ludwig DS. Milk and Health. N Engl J Med. 2020;382(7):644-654.
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