Healthy Habits 60_睡眠11
今回は、小学生における睡眠呼吸障害とアレルギー性鼻炎を調査した論文を読みました。(※)
睡眠は、「時間」は絶対的に大切ですが「質」も大事です。その「質」を損なう可能性のある睡眠呼吸障害とアレルギー性鼻炎に焦点を当てています。
睡眠呼吸障害(Sleep-disordered breathing : SDB)
単なる「いびき」から閉塞性睡眠時無(低)呼吸症候群(obstructive sleep apnea/hypopnea syndrome: OSAHS)までを包括した概念になるので、睡眠時無呼吸のみを指すのではない。
Introduction
・SDBは小児科医が日常診療でよく遭遇する問題
・親が報告した子どものいびきの有病率は7.45%
・SDBは、行動上の問題、学業成績の低下、長期的な心血管機能障害など、さまざまな悪影響と関連すると報告されているためQOLに大きな影響を与える
・アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis: AR)は臨床でよくみられる
・ARとSDBが両方あると、QOLのさらなる低下に繋がる可能性がある
・「OSA-18」は、OSAHSの小児のQOLを測定するために最も使用されている
・SDB関連のQOLを調べた研究のほとんどが、アデノイド切除術などの治療後の影響を判断するもの
・ARとSDBに関連したQOLの低下との関連は、研究間で一貫していない
【この研究の主な目的】
・子ども一般でSDB関連のQOLをみること
・ARとQOLの関連をみること
「OSA-18」とは、小児の睡眠障害に対するスクリーニング法として一般的な質問紙のことで、過去4週間の間の5つの項目を合計18個のアンケートにて1~7点までの7段階で評価するもの。
Material and methods/Statistical analysis
・2024年2月~6月
・タイの10の小学校 6~12歳を対象
・人口統計学的データ、医師によるアレルギー性鼻炎と喘息の診断歴は、保護者から収集
・OSA-18を保護者が記載
・ARと非ARのグループ間で、割合の違いが統計的に有意かどうかを検定。
・ARと非ARのグループ間で、連続データの平均値に差があるかを検定。
・線形回帰モデルでARがOSA-18スコアにどのように影響するかを測定。
線形回帰の結果において、年齢や性別、家庭の収入、喘息歴、BMIなどの交絡因子を考慮に入れて、ARがOSA-18スコアに与える影響を調整。
Results
合計3053人、平均年齢 7.02歳±0.4(SD)
アレルギー性鼻炎 13.4%
気管支喘息 5.9%
・OSA-18 score 39.7±13.8
QOL 中等度影響(60-80) 8.9%
QOL 重度影響 (>80) 0.6%
・ARありが、有意にOSA-18総スコアが高く、日中の眠気を除いた5つの項目毎でも有意に高かった
・OSA-18 score 中等度以上の割合は、AR群の方が有意に高かった
・ARがOSA-18に与える影響
各因子を調整した後でも情緒項目以外(4つの項目:睡眠障害、身体的障害、日中の眠気、保護者の懸念)は、有意に影響していると言える
Discussion
・地域の小学生においてOSA-18で中等度以上が約9.4%もいた
・ARのある児はない児と比較して、OSA-18スコアが高かった
・鼻漏や鼻づまりなどのARの特徴的な症状は、睡眠の質の悪化や日中の眠気につながる可能性がある
Limitation
・ポリソムノグラフィーは実施していない
・質問票なので想起バイアスの可能性
・親の主観も入っており点数に影響する可能性
アレルギー性鼻炎の鼻症状のせいでいびきが多いという単純なものではないという結果でした。健康集団の小学生の約10%が中等度以上の睡眠呼吸障害を抱えており、放置されている可能性があるということです。それをスクリーニングするためにも、アレルギー性鼻炎への対応は大切だと再認識しました。

(※) Sritipsukho P, Chaiyakulsil C, Junsawat P. Quality of life of elementary school students with sleep-disordered breathing and allergic rhinitis: A population-based study in Thailand. PLoS One. 2024;19(9):e0310331.
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