WHOガイドライン(運動・スクリーンタイム・睡眠)の遵守率
- 善導寺こどもクリニック
- 2 時間前
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Healthy Habits 86_総論12
今回は、 第1回で取り上げたWHOの5歳未満の身体活動・座位・睡眠ガイドラインを世界中の子どもたちがどれだけ満たしているかを調査した論文を読みました(※)。
Introduction
ガイドラインでは、1 日 で180 分の身体活動 (そのうち少なくとも 60 分は中程度から強度) 、スクリーンタイムを 1 時間を超えないこと、10 時間から 13 時間の良質な睡眠をとることを推奨している。33か国の子どもたちがどれだけこの推奨を満たしているかを調べることが目的。
Methods
2008年7月〜2022年9月に収集された世界各地のデータを統合して解析。最終的に14件の研究からデータ提供を受け、国や地域ごとの比較が可能な形に整理。
<測定内容>
・身体活動
子どもたちは腰または手首に加速度計を装着し、少なくとも4日間データを記録して身体活動量を評価。
・スクリーンタイム
保護者が「典型的な1日のメディア使用時間」を報告した。平日と週末が分けて報告されている場合は、加重平均を用いて1日あたりの平均を求めた。
・睡眠時間
保護者が「1日あたりの睡眠時間(昼寝を含む)」または「典型的な睡眠スケジュール」を報告。平日・週末のデータがある場合は、加重平均を用いた。
Results
解析対象は、33か国・7017人の幼児(平均年齢4.1歳)。
地域別ではヨーロッパ(31.8%)と西太平洋地域(36.4%)が中心で、約8割(78%)が高所得国からのデータだった。
WHOの3つの推奨基準をすべて満たしていた子どもは、全体で14.3%(95%信頼区間:9.7〜20.7%)だった。
WHOが推奨する5歳未満の「3つの運動・生活習慣ガイドライン」
・1日180分以上の身体活動(うち60分以上は中強度〜高強度:MVPA)
・スクリーンタイムは1日1時間以内
・睡眠は10〜13時間
■身体活動・スクリーンタイム・睡眠のそれぞれの達成率
身体活動(≥180分/日, MVPA≥60分)約49% 男児のほうが多い(56% vs 女児42%)
スクリーンタイム(≤1時間/日) 約42% 女児のほうがやや多い(45% vs 男児38%)
睡眠(10〜13時間/日)約81% 男女差は小さい(男79%, 女82%)
3項目すべて満たす 約14% 男児17%, 女児13%
■所得水準別の傾向
高所得国:14.4%
中所得国(上位):11.9%
低・中所得国(下位):16.6%
→ 高所得国ほど生活環境が整っている一方で、スクリーンタイムの増加などが影響し、必ずしも健康的とは言えない傾向が見られた。
■地域別の特徴
ヨーロッパ:23.5%(最も高い達成率)
アフリカ:23.9%(ヨーロッパと同程度)
北・南アメリカ:7.7%(最も低い)
西太平洋地域(日本やオーストラリアを含む):12.4%
東南アジア:9
→ 全体として、欧州・アフリカでは活動的で規則的な生活が保たれやすく、アメリカ大陸ではスクリーン利用が多く睡眠が短い傾向が見られた。
■男女差の傾向
身体活動:男児が女児より明らかに多い。
スクリーンタイムと睡眠:女児の方がやや規則的。
一部地域(アフリカ・アメリカ大陸)ではこの傾向が逆転。
Discussion
Limitation
・対象国は世界の約17%のみとなっていること
・質問項目のばらつき。スクリーンタイムや睡眠時間の質問内容が研究間で異なり、推定値に影響した可能性
・既存の測定方法や基準の多くが高所得国の研究に基づいており、他文化への妥当性が十分でない
・データが古い、大半のデータは5年以上前、かつCOVID-19以前に収集。現在の幼児の生活習慣を正確に反映していない可能性
3〜4歳という発達期において、身体活動・適切なスクリーンタイム・十分な睡眠の3つを同時に満たしている子どもはごく少数にとどまるという結果は、単に行動の問題ではなく、生活環境・家庭での習慣・社会的サポートが大きく影響していることをうかがわせ、地域・政策レベルでの介入の必要性を示すものだと感じました。

(※) Chong KH, Suesse T, Cross PL, et al. Pooled Analysis of Physical Activity, Sedentary Behavior, and Sleep Among Children From 33 Countries. JAMA Pediatr. 2024;178(11):1199-1207.
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