Healthy Habits 50_食事9
今回は、子どもの甘味の嗜好に関する面白い実験結果を報告した論文を読みました。(※)
Introduction
目的
・幼少期および成人期に甘味嗜好に人種的および民族的差異が存在するかどうか
・乳児期の甘い水の摂取で、幼少期の甘味嗜好が変化するかどうか
Materials and methods
対象
アフリカ系アメリカ人の子ども62人と母親55人
ヨーロッパ系アメリカ人の子ども66人と母親56人
子どもの年齢は6~10歳(平均7.8±0.1歳)
母親は平均36.0±0.6歳
手順
異なるショ糖濃度の溶液が準備される
2つの溶液を味見して被験者が好みで選択
好みで選択した溶液とまた別の溶液が提示され、また味見して比較し好みを選択
そのあと、順番を逆にして同じペアをまた味見して好みを選択していく
これらの試行で選択されたショ糖濃度を幾何平均で計算
人口統計学、身体計測(身長、体重、BMI)、sugar waterの使用経験などの情報を母親から取得
乳児期にsugar waterを頻繁に飲ませた群と、一度も飲ませたことがないかほとんど飲ませたことがない(10回未満)群の2群に分けられた
Results
人口統計学および身体測定
ヨーロッパ系アメリカ人の母親と比較すると、
アフリカ系アメリカ人の母親は有意に若く(33.6±0.8歳対38.4±0.7歳)、
独身である可能性が高く(71%対2%)、
世帯収入が低く、
教育年数が少なかった(13.4±0.2年対14.8±0.3年)
子どもの年齢
アフリカ系アメリカ人の子どもは、
ヨーロッパ系アメリカ人の子ども(7.4±0.1歳)より年齢が高かった(8.1±0.2歳)。
子どものBMIは両群間に差は認められなかった
2つの人種・民族グループ間にはさまざまな人口統計学的・年齢的差異があったにもかかわらず、さらなる分析により、これらの測定された人口統計学的因子はいずれも、子ども・大人のいずれが好むショ糖のレベルとも有意に関連していないことが明らかになった。
甘いものの嗜好と砂糖水を与える習慣
・子供は母親よりも有意に高濃度のショ糖を好んだ
・アフリカ系アメリカ人の子供および母親は、ヨーロッパ系アメリカ人の子供および母親よりも有意に高濃度のショ糖を好んだ
・アフリカ系アメリカ人の38%が乳児期に日常的にsugar waterを与えられていたが、
ヨーロッパ系アメリカ人の子どもではこの習慣があったのはわずか6%だった
・しかし人種に関係なく、sugar waterに早くから接していたことは、小児期に好むショ糖のレベルと関連していた
・乳幼児期に日常的にsugar waterを与えられていた子どもは、ほとんどあるいは最小限にしか与えられていなかった子どもと比較して、有意に高いレベルのショ糖を好んだ
まとめ
乳児期にsugar waterにさらされることは、小児期のショ糖の濃度の好みと関連しており、
乳児期にsugar waterを習慣的に与えられていた子どもは、ほとんど与えられていなかった子どもに比べ、
有意に高いレベルのショ糖濃度を好む
乳児期の習慣はその後の味覚形成に影響する可能性があるという結果でした。
第44回にも乳幼児の食行動がどう形作られるのかに関するレビューをまとめています。
(※)Pepino MY, Mennella JA. Factors contributing to individual differences in sucrose preference. Chem Senses. 2005 Jan;30 Suppl 1(Suppl 1):i319-20.
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