Healthy Habits 42_身体活動7
今回は、子どもへの「運動の処方箋」に関する医療者の視点を報告した論文を取り上げます。(※)
第30回で「運動処方箋」のことを取り上げましたが、それを実際に行っている医療者の現場を評価したものです。
米国小児科学会が小児科医に運動(physical activity:PA)を促進することを推奨していることや、「Exercise is Medicine」キャンペーンのような全国的な取り組みにより、医師によるPAの処方が最近広まっている。
屋外 PA 処方プログラムが効果的に PA を増やすかどうかを調査した研究はほとんどない。
屋外 PA 処方プログラムを成功させるには、小児医療従事者の視点を理解することが重要。
Methods
米国小児科学会のメンバーに無作為にメール送信
小児に関わる医療従事者(小児科医、看護師など)を対象に30-60分のインタビューを実施
2015-2016年に対象者となった15人の医療者に実施
著者らが作成した質問項目を使用して全員に同じ質問をした
データ分析には主題分析法(Thematic Analysis)を用いた
Results
小児科医12名、看護師2名、医師助手1名が参加
身体活動を促進するための現在の戦略
・現在の身体活動の評価
・家族に地域の遊び場(公園など)を見つけるため役に立つ資料を提供
・具体的な目標設定をして、目標のフォローアップをする
・医療者自身がロールモデルとなる
運動処方の障壁
・克服すべき障壁が多いと、運動処方は効果的ではないと考えてしまう
・子どもや親の時間的制約の問題
・子どもの肥満や喘息の問題
・安全な遊び場所やスポーツをするための資金
・医療者側の診療報酬の問題
・医療従事者の身体活動の利点に関する認識の不足
身体活動を促進するための潜在的な戦略
・テクノロジーの使用
・身体活動を行う場所の確保
・身体活動に関するリソースを提供すること
・各家族にあわせて個別化する
Discussion
・身体活動に関する話し合いを個々の子供と家族に合わせて調整することの重要性は最も一貫したテーマ
・医療者にトレーニングとリソースを提供して、患者や親と会話できるようにすることが重要になる。
・話し合いをする時間的制約
・身体活動の健康上の利点に関する科学的証拠について医療従事者を対象とした情報リソースが不可欠
・運動処方が身体活動行動に及ぼす有効性について一貫した結果が得られた研究がほとんど行われていないことが問題点
Conclusion
この研究結果は、屋外の運動処方プログラムの開発にいくつかの重要な示唆を与えている。 第一に、処方プログラムを開始する前に、地域の野外環境の支援と障壁を十分に評価しなければならない。 第二に、医療者は患者や家族と屋外での活動に関する目標についてどのように話し合うか、またこの話し合いを促進するための情報源について研修を受けるべきである。 処方プログラムはまた、医療者のオフィス、公園やレクリエーションのスタッフ、またはその他のいずれかを通して、家族とフォローアップするシステムを開発すべきである。 最後に、医療者が他の同僚に屋外でのPAの処方を勧められるような情報源とさらなる研究が必要である。
簡単にまとめると、「運動を処方する」ことはまだまだ現実的に難しく、事前準備が必要ということです。
医療者自身がロールモデルとなる、というのは耳の痛い言葉でした。
地域の環境として、善導寺周辺で個人的にお勧めしている公園は、
・久留米市東部運動公園
・コスモスパーク北野
・福岡県緑化センター です。
(※) Christiana RW, James JJ, Battista RA. Prescribing Outdoor Physical Activity to Children: Health Care Providers' Perspectives. Glob Pediatr Health. 2017;4:2333794X17739193.
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