Healthy Habits 49_身体活動 8
今回は、6歳未満の子どもの身体活動と健康に関するシステマティックレビューを取り上げます。(※)
Introduction
成人になるまで現れない非感染性疾患のリスク要因に対する身体活動の影響に関心が移行した。
2008年のガイドラインでは、学童の子どもに60分以上の中程度以上の活動が推奨されたが、6歳未満については知見が不足していた。2018年には幼児に関する研究が増え、関連するガイドラインが策定された。
Methods
6歳未満の子どもにおける身体活動と健康アウトカム(脂肪、体重、骨の健康、心血管の健康)の関連を評価するため、無作為化比較試験と前向きコホート研究を対象とした。
電子データベース(PubMed、CINAHL、Cochrane)での検索に加え、専門家からも関連文献を提供。対象としたのは、2017年2月までに発表された英語の記事。
Results
体系的な検索により、合計 1257 件の研究が特定された 。タイトルと抄録をスクリーニングした後、1166 件の研究が除外され、91 件の研究が完全にレビューされた。これらのうち、19 件の研究が完全な包含基準を満たしていた。さらに 8 件の研究が、この分野における著者の知識に基づいて特定された。2018 年の身体活動ガイドライン諮問委員会の科学報告書が発表されるまで、27 件の研究がこのレビューに含まれた。
□体重と脂肪率
身体活動レベルが高いほど、低年齢児の体重および/または脂肪率が低いことと関連することを報告している点では一貫していた。 有益性をもたらすのに必要な特定の身体活動量を特定することはできなかった。
□骨の健康
活動的な小児ほど統計学的に有意に骨が丈夫であることが示された。しかし、体重と脂肪率に関するエビデンスと同様に、身体活動測定値の違いにより、骨の健康効果に必要な身体活動量を特定することはできなかった。
□心代謝系の健康
6歳未満の小児における身体活動と心代謝系の健康指標との関連を調べた研究はほとんどない。 血清脂質およびリポ蛋白値、呼吸器症状、血圧に関する転帰を含む3件の前向きコホート研究が同定された。
・3~4歳児において、身体活動が体脂肪レベルの低下やフィットネスレベルの高さとの関係を通じて、血中脂質やリポ蛋白と間接的な関連があるようだと報告。
・5~7歳児において身体活動と拡張期血圧との間に逆相関があると報告。
・2歳時の身体活動は、3~4歳時の喘鳴や息切れなどの呼吸器症状とは関係がなかったと報告。
身体活動が心代謝リスク因子に及ぼす影響を判断するには利用可能なエビデンスが不十分であると判断。
□認知
就学前児童の身体活動と認知的転帰に関するシステマティックレビュー2件が、組み入れ基準を満たした。
・7つの観察研究と実験研究が検討され、6つの研究で身体活動の量が多いほど、認知アウトカムに有益な効果があると報告。
・6つのRCTのうち5つが、4~6歳児の認知発達の指標にプラスの効果を認めたと報告。
既存の研究や引用されたシステマティックレビューは、幼児の認知アウトカムに対する身体活動の有益な効果の可能性を指摘しているが、厳密な研究プロトコルを用いたより多くの研究が必要である。
Discussion
この論文で示された系統的な文献レビューの全体的な結論は、3~6歳の子どもにおいて、身体活動量が多いほど骨の健康状態が良好で、体重の状態も良好であることを示す強い証拠があるというもの。 しかし、6歳未満の子どもにおける身体活動と心代謝系の健康指標との関係を示す証拠は不十分。 さらに、すべての健康アウトカムについて、用量反応関係を決定したり、身体活動と健康との関係が年齢、性別、人種/民族、社会経済的地位などの因子によって緩和されるかどうかを決定したりするには、エビデンスが不十分。
小児、特に幼児において、身体活動のアウトカムを設定すること、それを正しく評価することは難しいことだなと思いました。心血管系代謝や認知に関してはすぐに結果が出るというカテゴリではないので、証拠が少ないことは当然のような気もしました。
(※)Pate RR, Hillman CH, Janz KF, Katzmarzyk PT, Powell KE, Torres A, Whitt-Glover MC; 2018 PHYSICAL ACTIVITY GUIDELINES ADVISORY COMMITTEE*. Physical Activity and Health in Children Younger than 6 Years: A Systematic Review. Med Sci Sports Exerc. 2019 Jun;51(6):1282-1291.
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