Healthy Habits 17_総論4
今回は、母親が主観で評価した子どもの健康度は、実際のその子の健康度とどの程度関連しているのかを調べた論文を取り上げます。(※)
Introduction
成人では自分の健康状態を自己評価する尺度は妥当であることが認識されているが、子どもでは検証されていない。幼い子どもは通常、健康状態を評価する場合、母親の認識を尋ねる必要がある。「母親の認識」が子どもの健康指標として有効かを調べることが今回の目的。
Methods
1999年 カナダのケベック州 2045人の子どもを対象
生後17か月のときに収集されたデータを使用
□従属変数:子どもの健康状態に関する質問(母の主観)
「あなたの子どもの健康状態は、(excellent・very good・good・fair・poor)」
□独立変数(様々な健康指標)
急性の健康問題(中耳炎、胃腸炎、発熱を伴う気道感染症など)、慢性疾患(アレルギー、心臓病、気管支炎、腎臓病、精神障害、てんかん、脳麻痺など)、喘息発作、入院歴
□制御変数
母の年齢、配偶者の有無、移民の有無、世帯収入、教育レベル、雇用状況、子の性別・出生順位・早産・低出生体重児など
ロジスティック回帰 逐次投入法を用いて解析。分析では、母親と子供に関連する両方の特性の交絡的な影響が制御された。母親が評価する子どもの健康状態は、excellentかそれ以外で分けた。
Results
・excellent以外を選択したのは37%
・子どもの2/3近くが3ヶ月以内に少なくとも1つの急性の健康問題があった
・慢性的な健康問題があるのは10%未満
・7.5%が喘息発作を起こしたことがある
・12%が過去1年間に少なくとも1回は入院していた
母親が子どもの健康状態をexcellentではないと認識する確率は、子どもが急性の健康問題を抱えている場合の方が高かった(odds ratio (OR)=2.2、 95% confidence interval (CI) 1.7–2.8)。同様に、慢性疾患を抱えている(OR = 2.4、95% CI 1.8-3.3)、喘息発作歴がある(OR = 5.2、95% CI 3.6-7.5)、入院歴がある(OR = 3.3、95% CI 2.5-4.5)子どもは、母親が子どもの健康状態をexcellentではないと認識する確率が高かった。
交絡因子を調整した後でも、これらのORは同じだった。
Discussion
・母親による子どもの健康状態の評価は、子どもが経験した健康問題と強く関連していることが示された。母親や子どもに関連する因子は、この関連に影響しない
・この結果は、子どもの健康問題の有無の指標としての母親の健康状態の認知尺度の妥当性を支持する
Conclusion
母親は子どもの健康状態を評価する際に優れた回答者であることがわかった。
母親は、子供に影響を及ぼす健康問題の有無によって、子供の総合的な健康状態を評価する。この測定法は、1つの質問を通して、子どもの特性や母親の特性に関係なく、現在健康問題を抱えている子どもを特定することが可能。
子どものどんな状態が「健康」なのかは議論がありますが、この研究では、「身体的健康」と母の評価する健康度が関連するかを調べています。小児科診療では、母による「何かいつもと違う」という印象は貴重な情報というのが常識です。この研究結果も、「母の直感」の正確性を証明しています。
子どもの年齢が上がるにつれて、心理的・社会的な要因などの健康に影響する因子は増えていきますが、それでも母は子どものことを直感で、総合的かつ正確に評価していくのだろうと思います。
(※) Monette S, Séguin L, Gauvin L, Nikiéma B. Validation of a measure of maternal perception of the child's health status. Child Care Health Dev. 2007;33(4):472-481.
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