Healthy Habits 41_睡眠7
今回は、3歳時点の睡眠環境が小学1年生時点の学業成績と非認知能力と関連していると報告した論文を取り上げます(※1)。
Introduction
非認知能力とは、
目標を達成したり、他者と協力したり、感情を管理したりする能力のことです(※2)。
実行機能、抑制機能、自尊心、勤勉さ、感情調整などのことを指します。
この研究の目的は、幼児期の睡眠習慣と小学校 1 年生の学業成績および非認知能力との関係を調査することです。
Participants and methods
縦断的人口ベースの後ろ向きコホート研究
尼崎市の健診と学術調査の記録を使用
2011~2014年生まれの子どもたちを小学校1年生になるまで追跡
最終的に、学力については4395人を、非認知スキルについては4087人を分析対象とした
学力は、小学1年生の国語と算数のテストを使用して評価
評価された非認知能力は、自尊心、勤勉さ、優しさの3つで、子どもたちへの質問で評価した。
(1)自尊心-あなたは良い人だと思いますか?
(2)勤勉さ-あなたは何事にも一生懸命に取り組んでいますか?
(3)優しさ-あなたは思いやりのある人ですか?
主要評価項目は、小学校1年生の国語の学力
副次評価項目は、小学校1年生の算数の学力
その他の評価項目は、非認知能力(自尊心、勤勉さ、優しさ)
予測変数は、
3歳時の就寝時刻(18:00~20:00、21:00、22:00、23:00以上)と、
睡眠時間(6~8、9、10、11時間以上)
共変量には、性別、誕生月、在胎期間、出産時の母親の年齢、母親の喫煙、経済状況、
3歳時のテレビまたは電子メディアの視聴、3歳時の精神発達遅滞が含まれた
就寝時刻(18:00–20:00、21:00、22:00、23:00以降)と睡眠時間(6–8時間、9時間、10時間、11時間以上)で、これらが国語・算数の成績や非認知能力にどう影響するかを分析。また、性別や出生月、母の年齢、母の喫煙、経済状況、メディアの視聴時間なども考慮した。線形回帰分析やロジスティック回帰分析を用いて、睡眠習慣と学業成績、非認知能力との関係を調べた。
Results
・3歳時点での就寝時刻
就寝時間18:00~20:00 (n = 506) 11.5%
就寝時間 21:00 (n = 2045) 46.5%
就寝時間 22:00 (n = 1555) 35.4%
就寝時間 ≥ 23:00 (n = 289)6.6%
合計(n = 4395)
・3歳時点での睡眠時間と学業成績には関連はなかった
・3歳時点の就寝時刻が早いほど、学業成績が良かった
・非認知能力との関連
自尊心 高い86.6% 低い13.4%
勤勉さ 高い89% 低い11%
優しさ 高い89% 低い11%
3歳時点での就寝時刻は自尊心との関連は見られなかったが、
就寝時刻が遅い子どもほど勤勉さは低下し優しさが弱かった
Discussion
・3歳時点の就寝時刻は、性別、経済状況、精神発達の遅れとは無関係に、小学1年生時の国語と数学の成績と関連していることがわかった
・3歳時点の早い就寝時刻と高い非認知能力の間に正の関連があった
・概日リズムが大事なのかもしれない
・非認知能力はその後の人生にとって重要なもの
・リミテーション
親の知能や教育は分析に入っていない・子どもの半数が追跡から外れた・因果関係はわからない・非認知能力は子どもの自己申告
子どもの睡眠は、睡眠時間だけでなく、就寝時刻も大切ということがわかりました。
「早寝早起き」にはこの意味もちゃんと含まれているんだと思いました。
(※1)Nishiyama M, Kyono Y, Yamaguchi H, et al. Association of early bedtime at 3 years of age with higher academic performance and better non-cognitive skills in elementary school. Sci Rep. 2023;13(1):20926.
(※2)OECD (2015), Skills for Social Progress: The Power of Social and Emotional Skills, OECD Skills Studies, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/9789264226159-en.
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